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店頭のワープロのように、好き勝手書いて好き勝手放置しておく気楽な場。 踊り子さんには手を触れないようお願いします
【主従お題】時々殴ってやりたくなる
2007年11月13日(火) 03:50
 ……最初がこれってのもどーかと思いますが、書き上がってしまったのでこれで。
 合意を「あい」と読ませるのは、某混沌妖怪漫画からの拝借です。なんかこのシーン、エロいんじゃよな。


 帰宅は深夜となった。
 送迎の車を降りて懐中時計に目をやれば、日没後と称するのも憚られるほどの時間帯だ。当然ながら屋敷は静まりかえっていたし、起きている気配すら感じられなかった。であるからこそ、盗人じみた動きで足を忍ばせて門をくぐったというのに。
「遅いお戻りで」
 さほど広くもない庭を抜けて重厚な樫の扉の前に立った時、ゆっくりと内に開いたそこには既に一人の男の姿があった。
 ぼんやりと輪郭を照らし出すのは、手に携えているランプの光。そのわずかな光源でも、纏っているものが見慣れてしまったお着せでも、学校の制服でもない事は見て取れた。部屋着としているらしい、異国風の紺の上下だろうか。
 覆いを掛けられて目を射ることのない輝きの中、穏やかに笑顔を浮かべる姿は幽霊のようにも思えて。
 ……思わず立ち止まりかけた自分に気付いて、心中で叱咤する。言い掛けた労いまでお陰で引っ込んでしまった。代わりに皮肉が口を衝いて出る。
「それも既に仕事の内よ。――上が動いて見せれば理解も早いわ」
 逃げるように早まりそうになる足をどうにか抑えて、目前を通り過ぎようとする。けれどそれを見越したように自然に、男の背中が視界に割り入ってくる。
 ぼんやりと照らし出される古い造りの部屋と廊下。――深夜の先導は、確かに従者の務めの内。けれど、自然な筈のそれすらも何かを遮られたようで、苛立たしくなる。
「……別に、起きていなくても良かったのよ」
「はて面妖な。下知も先触れも無いまま主より先に休む僕なぞ、それこそ物の役には立ちますまいに」
「だと言うなら、主の心身を気遣うのも仕事でしょう」
「蝶よ花よの扱いが幸いなれば、そのように」
 一瞬、言葉に詰まった。
「不気味だから止めてお願いだから」
「合意(あい)」
 くっ、と苦笑を噛み殺す音が聞こえて、――思わず背中を蹴りそうになった。
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