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店頭のワープロのように、好き勝手書いて好き勝手放置しておく気楽な場。 踊り子さんには手を触れないようお願いします
【主従お題】覇道を征く者
2008年01月22日(火) 04:22
 お久し振りの企画第二弾。デッサンみたいな感じでガリガリと。
 でも、なんかこー、主従とはちょっと違うような気もしなくはないんだよなあ。



 ―――決着はあっさりと付いていたのだ。
 本来、達人同士の死合いとはそういうものであるという。ましてそれが暗闇の側に棲む者たちによるものであれば尚のこと。事は刹那の中、かつ静寂の内に始まり終わる。
 仕掛けるのも一瞬なら、受けるのも一瞬である。その僅かな時間の中、生じる空隙を突かれたものが負け、死屍を晒す。生死を分けるのは僅かな差。それを踏み分けたのは運のようなもので。
 その日、斃れたのは初老の男が一人。
 暗闘では名など名乗られぬが故に知らぬが、太刀筋で御同輩と判り、おそらくはその身の苦境故にそれ以外の存在に腕を売ったと悟る。だが結局のところはそれだけだ。
 情を掛ける意味はなく、追う意味だけがあった。何より傅いた訳でもなく逆に未遂とはいえ主と、それに類する者を殺めようとしていた以上、放置していては危険が及ぶではないか。
 故に追って切り捨てた。最初の一太刀で利き手を断ち、次のもう一太刀で腹を割いている傷は臓腑を抉っている。放置すれば血が足りずに死ぬが、命を取り留めても刃は握れまい。
 学舎の友人たちが聞けば、残酷だ非道だと罵られそうだが、そうしなければやられていたし、見逃して殺される方が滑稽というもので。
 それが仕事。それが役割。故に―――

「何故――だ」

 血溜まりの中で呻くように呟いた言葉に、首を傾げたのは男にとっては当然の成り行きであった。
 振り向いてみせれば自分の血に噎びながら刺客がこちらに視線を向けていた。
「何故、とは?」
「何故……貴……ほど……男が、……な小娘に付い……る」
 掠れたそれは、怒りというよりは怨みに似た声だ。
 震えた言葉に、ごぼごぼと泡立ちの音を混じえながら、しかし言葉は途切れない。むしろ眼光は鋭く、彼とその手に下げた一振りの刀を睨み据える。
「……知って、いるぞ。……その刀、『市助』だ」
 次いで紡がれた古い名を、男は目を細めて聞き取った。
「我等が、悲願……成就させ……秘宝……それを……異邦の娘、など―――」
「知れたこと」
 薄く唇を歪めて、笑ってみせる。
「こなたも知っての通りぞ。壱の太刀が在るは翠の為。『市助』は守り刀、わしは守り役なればこそ、ここに揃ぅて御座りますのや――なれば揃うは主を守るが我等の役目」
「愚かな―――」
 ……驚きに目を見開いた刺客の顔こそ、見物だったかもしれぬ。
「貴様……、裏切る、のか」
「まさか」
「わしの生くるも死ぬるも、全ては翠の為ぞ。それが翠の望みなれば、氏素性に意味なぞおへん。それに、な」
 引き返し――男の手が届くか届かぬかのところでしゃがみ込み、刺客の顔を覗き込む。
「あんた――何ぞ勘違いしてなはるようやさかい、言うとくわ」
 目を細めたこちらの顔が、この闇夜の中で――さて、刺客に見えたかどうか。
「持った刀の優劣で勝ち負けの変わる戦なぞ、この世にはおへん。わしの力で変わることなぞ微々たるものや。翠玉も同じぞ。行くべき所に行って、帰る時に帰る」

 そう。全ては破壊されているように見えながら、同じ道を歩むのだ。
 詳細は違えど、起こるべきことは起こる。
 血筋が絶えたには絶えただけの理由があり――血が絶えてなお生き残るというのなら、それにはそれに意味がある。それを男は、ほんの十年前に知った。
 思い出すのは、冬枯れの荒野。
 雪の積もった街道の上、形ばかりの豪奢な衣服に身を纏いながら、けれど漫然と死ぬ時を待っていた過去の主に手を差し伸べた娘。決然とした眼差しで自分を見上げた少女。
 絶望を見つめながら揺らぐ事のなかった、その瞳。

「―――あと三年、いや、二年。それで嬢が斃れなんだら、それこそが天命ぞ」

 王は玉座に。それは刻まれた溝を水が伝うように。
 それが覇王たる主の望みであれば――それに従うのが従者の勤め。
 なれば、かつての同輩に刃を振るう事など、何を躊躇う必要がある?

 嗤う声に。
 刺客の男が返す声はなかった。
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