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店頭のワープロのように、好き勝手書いて好き勝手放置しておく気楽な場。 踊り子さんには手を触れないようお願いします
【SS】冬薔薇の下にて。
2010年01月24日(日) 04:21
 気に入ったボカロ曲を聴いていると、なんとなく脳内でキャラクターが動く事があったりするのですが。
 面白いことに、まったく存在していない新たなキャラが動く事というのは滅多になく、既存のキャラクターたちの別の一面というか、思いもしなかった側面が出てくる事が多いように思います。
(二次創作はあんまり無い。というか、二次創作を書くモードにならないとそういうことにはならない)
(いやそもそも、既存曲に合わせて書くとか出来ないのです。書いてる内に合ってくる事はかなりありますが、気付いたら足並みが揃ってる場合の方が明らかに多い)

 という訳で、以下、某大正浪漫風ボカロ曲を下敷きにしたら、何故か主従お題で使っていた連中になってしまったという罠。続くかはわからないというか、……所詮、殴り書きだしなあ。
 


 
 温室の鍵は開いていた。
 とはいえ、冬も近いこの時期、大半の花は落ちている。咲いているものはひとつだけだ。
 一番奥の、日当たりの良い場所に植えられた異国の薔薇。
 茶器の形状に似た大輪のそれは、ただただ白く美しい。清々しい香りを漂わせ、凛と花を開く。
 温室で守られているという事実すら忘れさせる、美麗な姿。
 故にこの木は「東の姫君」と呼ばれている。
 かつてこの屋敷に身を寄せ、この木の種を祖父に託した異国の女性の異称と同じように。
 

 
 ――「彼女」が一体どういう立場に生まれ、出会う前にどういう日々を送っていたのかを、自分は知らない。
 出会ったのも、既に十年は昔のこと。
 友人に会いに行く為に帝都に出向いた祖父に我が儘を言って付き従った、その帰り道。
 街道の脇道から僅かに入ったところに、彼女はいた。わずかばかりの従者を伴い、進む事も戻る事も出来ずに。
 異国風としか判らない旅姿に身を包み、けれど道半ばで斃れた美しい娘。
 ひっそりと、病で死にかけていた彼女を、途中、紆余曲折を経たとはいえ、結局の所「見つけ」たのは自分で、そしてそれを救う事を願ったのも自分だ。
 けれど祖父の気紛れで同行を許されただけの子供でしかなかった自分に、差し伸べる手はあっても引き上げる力はない。人一人を救うにも、祖父に懇願するという形でしか叶える事は出来なかった。
 ……あとは、どこかの醜聞で聞いたような話だ。
 身よりも行く宛もない、しかし明らかに上流階級に生まれたと判る気品を漂わせる娘。何より帝都の貴族娘たちと異なったのは、博識で知られた祖父を唸らせる知性を秘めていた事。知性を以て諸国に知られた老人の妾としては、けして的はずれな選択ではないだろう。
 彼女の立場から考えても、それはさほど間違った選択ではない。
 何よりあの時得ていた病は、祖父の蓄えた知識をもってしても結局払う事は出来なかった。仮にあのまま屋敷を出ていれば、おそらく一年と持たなかったに違いない。
 その感謝の印が、この白薔薇だ。
 四季を通じて咲く美しい白。けれど、そのあまりの儚さ故に温室から動かすことは難しい。接ぎ木をして育てても、少しの寒さで枯れてしまうのだという。
 だからこの花は、ここにしかない。
 これを咲かせ続ける事が出来るのは、彼女がいなくなった今、ただ一人。
 
「――嬢」
 
 唯一ここに残った彼女の従者――この眠たげな目をした得体の知れぬ男だけ。
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