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店頭のワープロのように、好き勝手書いて好き勝手放置しておく気楽な場。 踊り子さんには手を触れないようお願いします
【SS】嵐夜。
2007年07月21日(土) 14:15
 すいません、ネジ外れました(汗)
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 夜半から降り出した雨は、やがて豪雨となって街を埋めた。
 昨今連発される傾向にある「異常気象」の呼称に相応しく、突発的なそれに行政組織が押っ取り刀で対処を開始した頃、それとは対称的に住民達は早々に自宅に引き上げ始めていた。
 既にこれは、紛うことない嵐だ。荒れ狂う風。そして呼吸も出来ないほどの雨。
 荒れ狂うこれらに抗う術を、自然の一部たる人は持たない。
 外で荒れ狂うならば、家に閉じこもり、過ぎるのを待つ以外にない。それが幾多の時間を重ねてきたヒトという種の教訓であろう。
 故に。
 その日、敢えて出かけるという選択をした者は、二種類に分けられる。

 天候を理由にした者と、理由にできなかった者と、である。

 そして。
 その男たちは後者であった。



 雨宿りをしていた店を出て、五分。
 コートは置いてきた。上着は既に水を吸って重い。ズボンは跳ねた泥と雨に濡れ、散々たる有様だ。セットしていた髪も乱れて久しい。元より恰好に構うような気質とは程遠い性分ではあったが、ここまでの惨状になるとは自分でも思わなかった。
 そういう意味では、靴が本革でなかった事を喜ぶべきだろう。一見すれば安物のそれは雨の中であってもしっかりと濡れた地面を捉えている――職人というよりは、学者の手による代物。機能だけを優先させた、だが、だからこそこの足に相応しい。
 伝統などは鮫に食わせた。エレガンテなど、溝に捨てろ。
 この手に掴むのは勝利の二文字。それ以外に何が必要だというのか。

 びたびたと、怒りを叩き付けるように降る雨の先――それに同意するであろう人影を見つけ、男は笑みを浮かべた。
 内からにじみ出る愉悦、その色は黒。

「居たか」

 滝の落水にも似た轟音の中で、けれどその声は相手に伝わったようだった。
 同じく濡れ鼠の男だ。傘の庇護の下に見え隠れする髪は黒。纏うスーツはやはり濡れて――けれど男は律儀にもコートを羽織ったままだった。
 右手に傘、左手に斬る為の刀剣――日本刀をぶらりと下げたまま、男が笑う。

「居るさ」

 たとえ、雨が降ろうとも風が吹こうとも、一度交わした約束を違えるなど、彼等の間には在ってはならぬ事。
 左様。
 剣士とは――死合う為に生きている生き物だ。
 なれば、死合う以外の事柄とは、なにもかもが「余分」だ。言葉すら既に無意味―――
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